『重力ピエロ』 伊坂幸太郎
■短評
母親が連続レイプ犯に襲われ妊娠し、生まれてきた「春」と、「春」を弟に持つ主人公「泉水」。
「春」は落書き消しのアルバイト、「泉水」は遺伝子関連の会社に勤めていたが、あるとき二人の住む仙台市内に連続放火事件が起こる。
春が連続放火の現場近くに必ず落書きがあることに気付き、泉水と末期癌で入院中の父の三人が連続放火の謎に迫る。
登場人物の全員が知識豊富で、画家や哲学者や映画監督の名前と考え方が次々と登場人物の口から
出てきた上に相手もマニアックな内容に対応できるって都合の良さはマンガ的。
主人公「泉水」の弟「春」が実質的な主役なのだが、
この「春」が イケメンで、不思議クンで、正義感強くて、女嫌い。
さらに 出生の秘密に悩んでる という少女マンガもビックリのベタな悲劇のヒーロー的設定。
おまけに兄「泉水」の視点に感情移入するから、危なっかしい弟キャラ の属性まで付く。
完全に「萌え」狙いなのだが、ベタベタにはならない。そのサジ加減が絶妙な一作。
■読んだ動機
最近書かれた純文学小説を読むとどれももう一つ。
突き抜けきらないし、面白くない。
純文学ってジャンル自体に魅力を感じなくなったのか?
不安に思って他のジャンルで評価の高い作品を読もうと思った。
複数の作家による短編集『I Love You』では
一人だけ圧倒的に完成度が高かった伊坂幸太郎を思い出して購入した。
短編集『I Love You』の書評はこちら
■ジャンル
伊坂幸太郎はミステリ作家。
この『重力ピエロ』は直木賞候補にもなった代表作。
2003年の作品だそうです。
■感想
普段読む純文学系の小説ではないので、あくまで感想程度にしておきます。
ミステリってこんな感じなのか。
途中でオチが予想できてしまって、実際そのままのオチだったのが非常に残念。
スルスルとパズルが組み上がっていくような印象でストーリーがわかりやすすぎた。
もっと複雑な展開で最後に「やられた!」感を演出してくれるモノだと思っていたのに…
ただ、事件のオチとは別に主人公が父親の何気ない一言に救われるシーンは良かった。
ベタといえばベタかも知れないが、展開として予想外で効果的だった。
普段読む純文学系の小説と比べてみると、
登場人物がみな知識豊富でキャラが立ってて個性的なのだが、
その都合が良すぎる設定には感情移入できなかった。
構成は主人公「泉水」の一人称視点だが、
物語は弟「春」が主役になっている。
「春」が主役だと考えれば、この設定、少女マンガにありそうなヒーロー像じゃないか?
イケメンで、不思議クンで、正義感強くて、女嫌い なんて(BLがアリな)女の憧れだし、
実は 出生の秘密に悩んでる なんて悲劇のヒーローとして理想的だよ。
おまけに兄「泉水」の視点に感情移入するから、危なっかしい弟キャラ の属性まで付く。
完全に「萌え」狙いのベタな設定。でもベタベタにはならない。このさじ加減は絶妙。
もちろん確信犯なんだろうから、この著者はスゴい。
この小説は 読ませるし、ちょっと偉くなった気にもさせてくれるし、スゴい。隙がない。
でも、オレは女じゃないし、弟萌えじゃない。
それに「ベタ」なのと「あざとい」のは好みじゃないので、好きなタイプの小説ではなかった。
書評ブログのランキングです。よかったらどうぞ。
テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌